リスクと機会への取組み

 ISOの新規格では、「リスクと機会への取組み」を求めています。ISO14001やISO27001ではリスクアセスメントの手続きの中で実現していますが、ISO9001においては初めて出てくる考え方です。「リスク」と「機会」の原文は、“risks and opportunities”ですが、これは、“risk”も“opportunity”も何かが起き得ることを意味し、起きることが前者では「好ましくないこと」、後者では「好ましいこと」であると解釈される対語になります。

 この共通概念の“risk”に対応する“opportunity”は、「何かの実現が見込める好ましい状況や事情」と言う意味になります。すなわち、リスクと機会の共通の意図は「不確実性と可能性」というような意味になります。この「可能性」は事業の維持発展を図る特定の可能性であり、「不確実性」はこの過程で想定される不確実性であり、計画通りでない問題が起き得る可能性を意味します。

ISOの新規格(6.1項)では、対応が必要と決定した「可能性と不確実性」に基づいて組織の業務実行の枠組みを確立すると規定されています。すなわち、共通概念の「可能性と不確実性」は、事業活動たる日常業務の実行と管理の狙いであり、このような共通概念の「可能性と不確実性」とは例えば、次のようなものが考えられます。

■ISO9001の品質保証では、差別化商品で業界での主導的地位を維持するという可能性を追求し、新製品の初期不良による市場評価の低落という不確実性の結果の発生防止を図る。
■ISO14001の環境保全では、地域社会への環境影響の徹底した削減という可能性を追求すると同時に、原料生産や製品の廃棄における人為的な著しい環境破壊のないよう監視する。
■ISO22000の食品安全では、製造における絶対的食品安全の実績を築くと同時に、消費期限切れ製品の流通の防止を図る。
■ISO27001の情報セキュリティでは、顧客との取引に支障を来す外部からの攻撃に耐える能力の確保を追求する一方で、システムの運転や変更時などの自分の責任のシステム障害の絶対的防止を図る。

 少し難しい共通概念ではありますが、ISOの新規格における一つのトピックでもありますので、マネジメントシステムの継続的改善を実現するためにも有効に取り組んで下さい!

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